すばるくんが脱退するということ


日曜日からろくに眠れていない。今日は木曜日だというのに、未だに朝起きると「昨日までのことは夢だったのでは?」という錯覚に襲われる。このブログは数年前に気まぐれで作成したっきりひとつも記事を書くことなく放置していたのだけれど、今の気持ちを書き留めておくか、と久しぶりに引っ張り出してきた自ブログのタイトルに心臓を射貫かれる。全然月曜日の朝には終わってくれなかった。全然とるにたらない出来事でもなかった。

渋谷すばるという人物は、わたしが世界で一番好きなアイドルだった。関ジャニ∞は世界で一番好きなアイドルグループだった。わたしはすばるくんのファンだけれど、6人と一緒にいるすばるくんのことが大好きだったので、今とてもつらい。あの7人が「7人でいる」ことを愛しているので、つらい。つらい、という感情から1ミリも抜け出せない。

 

すばるくんが脱退するという話題は関ジャニのファン以外の人たちにもある種の衝撃を与えたのか、ツイッター上でいろいろな反応を目にする。有名人、アーティストも反応している。ワイドショーでもコメンテーターが物知り顔でコメントしている。その多くは好意的なものだ。「残った6人にはがんばってほしい」だとか「今後のすばるくんに期待」だとか。そういう意見を目にするたびに、もしかしたら多くの人は、7人いたうちのたった1人が欠けただけでは何も変わらないと思っているのかもしれない。6人と1人。「関ジャニ∞」というアイデンティティを形成しているのは当然人数的に多い「6人」の方だと思っているのかもしれない。特に、バラエティに出ている彼らだけを見ている人はそう思っているかもしれない。

だけど違うのだ。どうしてこんなにもファンが眠れない夜を過ごしているのかと言えば、「関ジャニ∞」のアイデンティティは「渋谷すばる」だからなのだ。

 

関ジャニ∞で個人人気を二分しているのは錦戸くんと大倉くんだし、テレビの露出と知名度は村上くんが群を抜いているし、横山くんも安田くんも丸山くんも、みんなみんな個性的だ。だけど、関ジャニ∞というグループは各々が頂点となって正七角形を形成しているのではなく、渋谷すばるを核として、他の6人はその核が発する強烈なカリスマ性に魅せられ、引き寄せられて1つの「関ジャニ∞」という固体を形成している、とわたしは考えている。これはわたしがすばるくんのファンだから思うのではなくて、他のメンバーのファンも同意してくれる方は多いのではないだろうか(もちろん異論は認めます)。

 

関ジャニ∞のバンドスタイルで行うライブを見たことない方は、本当に一度目にして欲しい。その光景を見ると、わたしがそう考えるに至る理由をわかってくれるんじゃないかな、と思う。すばるくんがステージのど真ん中で、赤いコードの繋がったマイクを握りしめて(わたしはこの赤いコードをすばるくんの「血管」だと思っている。たぶんこのコードを切ったらすばるくんに流れる赤い血が噴き出す、そんな気がしている)命を燃やしながら歌うその後ろを、他の6人のギターが、ベースが、ドラムが、パーカッションが、トランペットが、キーボードが響き、支え、共鳴する様は、ちょっと例えが思いつかないくらい、特別で、ある種の神々しさも感じる景色だ。

 

ワイドショーやネット記事なんかで、すばるくんの歌唱力が高いことばかりが取り上げられているけど、すばるくんは歌唱力だけで関ジャニ∞を引っ張っていたわけじゃない。ドームの馬鹿広いステージのど真ん中で、他の6人の演奏を背中に浴びながら歌を叫ぶその姿の、圧倒的な佇まい、それこそが、すばるくんが「関ジャニ∞の核」であるところだ。

わたしがぱっと思い出す印象深いシーンとして、JUKE BOXツアーでの「Your WURLITZER」と「West side!!」がある。「Your WURLITZER」は錦戸くんと安田くん(通称ヤンマー)の共作で、曲自体はとても短いし、横山くんと村上くんに至っては参加していない。だけど、この曲と、この曲のツアーでの演出は、「関ジャニ∞渋谷すばるを中心としてバンドで勝負していく」ということをファンに突きつけたシーンだと思った。そのくらい「すべては渋谷すばるのために」というヤンマーふたりの熱情を感じた。その流れからの「West side!!」は、ちょっとステージから押し寄せてくるものがあまりにも巨大なうねりすぎて、胸の前で手を組み呆然とするしかなかった(見たことない方はぜひとも見てください)。

 

 

ここで少し話は変わるけれど、ステージを降りたすばるくんにはまた違う側面がある。

すばるくんは自分のテリトリーの中に入れた人にはどこまでも優しくて甘えるけれど、世渡り上手からは程遠い所にいて、不器用で、愛想よくすることが苦手で、すばるくんをよく知らない人からは誤解されることも多い。そして、内に抱え込んでドツボにはまり込むことも多い。そんなふうに生きづらい性格なのだから、芸能界なんて厳しい世界では思うように呼吸することも難しそうな人、というのがわたしの思うすばるくんだ。そしてそういうすばるくんのずっとそばにいて、すばるくんが呼吸のしやすいように守ってきたのがメンバーであり、さらにいうと、すばるくんと同い年である横山くんと村上くんだった。

メンバーが記者会見をした日、ツイッターで「すばるくんは愛されてるね」という関ジャニファン以外の方の意見をたくさん目にした。ファン以外の方に、メンバーがどれほどすばるくんのことが大事で大好きなのかということがこんな形で世間に伝わってしまうなんて不本意にもほどがある。だけど、本当にそのとおりだ。メンバーはすばるくんのことが大切で、ここにくるまですばるくんのことをずっと守ってきた。メンバー同士みんな仲良しなので、それぞれがそれぞれを大事に思っているだろうけれど、すばるくんに対してはやっぱりどこか過剰だし、過保護といった方がいいかもしれない。そしてめちゃくちゃ甘やかしてもいる。他メンバーのファンからもそういう意見を目にするので、単なるすばる担のひいき目では無いはずです。

すばるくんが関ジャニ∞の核だからだろうか?道標的存在だからだろうか?

本人たちが教えてくれたらいいのだけど、そんなこと教えてくれるわけないので、勝手に想像するしかない。だからわたしは、すばるくんが抱える「生きづらさ」が大きいのではないかと思っている。

すばるくんはジャニーズJr.としてミュージックステーションでソロステージを披露するや爆発的な人気を獲得して「東の滝沢、西のすばる」なんて言われる時代を迎えた。だけど勢いはやがて終息して、不遇の時代に入っていく。10代の多感な時期に絶頂とどん底を味わって、傷つきずっともがいてきたすばるくんの話はここでは書ききれないので知らない方はぜひ自分で調べて欲しい(刺青を入れたこととか、やがてそれを消したこととか、もういちいちたまらない気持ちにさせられる)。
そんなふうにボロボロになったすばるくんを一番そばで見てきた6人だからこそ、みんなすばるくんがあのときみたいに傷つくことが怖かったんじゃないかと思う(ここらへんはオタクの妄想が爆発しているのでいちファンの戯言として読んでください)。
見る者を圧倒するほどの歌声と、唯一無二の存在感。でも、そんな強烈な輝きを持っているのに、すでに傷を負っていて、壊れやすい。そんな宝石のような人が自分のグループにいたとしたら、その宝石を守りたくなるのも当然なんじゃないだろうか。

すばるくんは、36歳の、言ってしまえば中年男性だ。1人の自立したいい大人だ。すばるくん自体ここ数年ですごく丸くなったし、「ひとりでのお仕事もできるようになったんだね」とファンが安堵するくらいの処世術は身につけたように思う。

それなのに、すばるくんが脱退するという記者会見ですら、当のすばるくんをあんなにも守っていた。
「守られている環境から出たい」と発するすばるくんの横で。この期に及んでさえ。
すばるくんの言った「守られている環境」を、「ジャニーズ事務所」という大きなものとして捉えた人が多いと思うし、それは間違っていないと思うけれど、わたしには他のメンバー6人、もっと言えば、会見で声を震わせ泣いていた横山くんと、「すばるが心配だから同席した」とあの場で発した村上くんというふたりの存在のような気がしてならない。

わたしはずっと、すばるくんはヨコヒナが居なくなったら生きていけないと思っていた。すばるくんにとって自分の弱みを見せられる横山くんと、すばるくんが全身で寄りかかって甘えてもしっかり支えてくれる村上くんが居なくなったら、この人はダメだ、と思っていた。


それなのに、すばるくんは、そこから飛び出すことを決めてしまった。

 

すばるくんにずっと憧れて、見ているこっちが恥ずかしくなるくらいすばるくんに対して一生懸命だった錦戸くんのことも、すばるくんを愛してると公言して憚らない丸山くんのことも、音楽を通して共鳴し合ってた安田くんのことも、すばるくんの後ろでドラムを叩くのが好きだと言う大倉くんのことも、すばるくんは置いていくという。すばるくんは関ジャニ∞そのものなのに、そのすばるくんが「関ジャニ∞ではできない」と言って、違う場所へ行ってしまう。

はっきり言って、ひどい裏切りだ。6人はもうキレていいし、怒ってもいいし、お前なんか知るかってすばるくんと縁をきってもいいと思う。

それなのに、あの会見だ。すばるくんに対するあのメッセージだ。「本当に仲がいいね」なんていう話ではない。どうしてそんなに甘いんだ。甘すぎる。何全員で送り出してるんだよ。そういう甘さから抜け出したいってすばるくんは言ってるんだよ。嫌いになれよ。その憎しみをバネにしてグループとしての弾みを付けろよ。「すばるくんのことを嫌いになれなかった」じゃないよ。ここまでくると何でそこまですばるくんのことが大事なのかわたしにもわからなくなってきた。だけど、それでこそわたしの好きな関ジャニ∞だとも思う。

 

道標を失った6人の関ジャニ∞はどうなってしまうんだろう。正直、わたしにはさっぱりわからない。たぶん、ファンの誰にもわからないし、本人たちもまったくわからないと思う。

すばるくんにとっての6人は何だったんだろう。大切な存在であったことは間違いないのに、それを手放すことにしたすばるくんのことを、受け入れられない。わたしまで道標を失って迷子になってしまった気持ちでいっぱいだ。

この先のすばるくんと、6人の関ジャニ∞を応援したい気持ちはあるけれど、すばるくんの周りに6人がいないことも、関ジャニ∞の中にすばるくんがいないことも、直視できる自信がない。6人の関ジャニ∞に慣れたくない。

自分がどこにもいけなくてつらい。だれか助けてほしい。だれかなんてことはわかっていて、その可能性がゼロであることに、また絶望する。